ただのOLのブログ

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ミュージカル『フランケンシュタイン』再演 大阪公演 感想

 初演ですごい量のお便りが届いて今回の再演となった(らしい)本作品。
無事、幕が下りたということでネタバレに配慮せず感想を書いていきたいと思います。
本当にお疲れさまでした。
いつも頭の中が整理できておらず上手く言葉にできないのですが、少しずつでも読みやすくなっていくようにしたいと思います。


 まずはあらすじから。

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19世紀ヨーロッパ。科学者ビクター・フランケンシュタインが戦場でアンリ・デュプレの命を救ったことで、二人は固い友情で結ばれた。“生命創造”に挑むビクターに感銘を受けたアンリは研究を手伝うが、殺人事件に巻き込まれたビクターを救うため、無実の罪で命を落としてしまう。ビクターはアンリを生き返らせようと、アンリの亡き骸に自らの研究の成果を注ぎ込む。しかし誕生したのは、アンリの記憶を失った“怪物”だった。そして“怪物”は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓うのだった…。(公式HPより)

 今回重かったですね!!誰も救いがないバッドエンドで本当につらい。
 前回のファントムを観劇してくれた知人が今回も行ってくれたのですが、第一声が
「重すぎない…?え、これずっと演じてるのすごすぎでしょ。前回がファントムで次がこれ(本作)だから梅芸がトラウマになりそうなんだけど…。」でした。
 梅芸云々に関してはタイミングが悪かったというか、申し訳ないことをした気分です。
 その後、
「劇中の加藤さんはすごい怖かったけど、普段はどんな感じなの?」
と聞かれたので、
「(エリック、アンリ、怪物の中だったら)アンリっぽい感じかな」
「えー!?めっちゃかっこいいやん!今度そんな役で明るい内容の時は教えて!見たい!!」
 言いながら役の性格が極端すぎるやろと思いながらそんなやりとりをしました。「ローマの休日」は明るいと思うので大阪に来てくれたら嬉しいです。映画未視聴で内容知らんけど。

 話がめちゃめちゃ逸れましたね。では今回はキャラクターについて書いていきつつ、感想を書こうと思います。(※あくまで個人の感想です)

  • アンリ/怪物(※以下、加藤さんが演じられた印象です)
    ビクター教信者。有言実行の頑固者。
     この作品はメインの方みなさん一人二役に設定されていて、アンリに関しても2役のような感じです。しかし、ストーリーを見るとアンリについては2役が別キャラクターではなく、一本の筋が通った1役の繋がりのあるキャラクターかと思います。この作品のストーリーをアンリ(怪物)の復讐劇と見ることもできると思うので。
     まずは一幕から順番に書きます。
    ほんと、アンリってただの好青年ですよね。さわやかで、周りへの気遣いも感じられて、敵兵を助けようとする熱意と優しさもあります。また、酒場のシーンの、女性をダンスに誘うところで手招きしながらウインクしたのを見たときは思わず「え?そんな遊び心もあるの?欠点ないよ…。」と固まりました。そして、将軍の右腕縫合もビクターと共に成功させた(はず)ので、きっと研究者としても優秀なのだと思います。何より、ビクターが素晴らしいと評した論文を発表していますし。ただ、天才というよりも努力の秀才という印象を受けました。具体的にどこがと挙げられず、「なんとなく」なんですけどね。
     個人的にこれが欠点というか短所では?と思っているところは、ビクターがいろいろ言ったけど「君の夢の中で生きられるなら死んでも後悔しない」から研究を続けてくれって断ったところです。いくらスパイ容疑から助けてくれて、かつ憧れているからって頑固すぎやしませんか?ビクターもその強い意志に惹かれたのかもしれないけど、笑顔で処刑台に向かうことないじゃん…。
     処刑台と言えば、機会があってWキャストの小西さんも観劇したのですが、そこのシーンが一番対照的だと思いました。がっつり見たわけではないので違うかもしれませんが、私としては小西さんは悲しみの方が強く、「一緒に夢見れるなら~…」は強がっているような印象を受けましたが、加藤さんは心底これでいいと思っているような印象でした。どちらも友情があるからこそ、孤独を救ってくれた相手だからこその感情だと思いますが、正反対だったように思います。もっと言うと悲しみが強いということは、研究きっかけだけれど友人としてビクターと仲良くなったし、せっかくできた友人と別れることが悲しい。一方で、自身の死を肯定しているということは、研究が前進することに対して喜んでいて研究仲間を見つけられたことが嬉しかったのかな…なんて思ったり。

     そして怪物へと繋がるわけですが、アンリの優しい部分が出ていて基本的にやられてから反撃しているだけで、怪物から先制攻撃をしているのってないような気がします。怪物誕生のシーンとか、闘技場のシーンもそうだったと思います。もちろん復讐実行中は違いますが。
     アンリに対しても、怪物に対しても、「わかる」って部分が大きいので、そうだよね~という感じで見ていました。怪物が、化け物みたいに強いからと金儲けの見世物にされて散々な扱いを受けたから、自分を作り出したやつを殺してやろうという動機も理解できますし、アンリの記憶を思い出してからも、自分の命を懸けてまでビクターと自分の夢をビクターに託したのに研究は進んでいない、むしろ放棄されているとわかったから殺してやるという動機も、少し怖いけど理解できます。
     そう考えると、アンリも怪物も自分の意思を実現させてから死んでいるんですね。ただただすごいなと思います。
     それに対してビクター、あなたに私はいろいろぶつけたい思いがあるんですよ。
  • ビクター
    神になろうとするも叶わず、親友を二度殺した人。
     まず、私の最大の疑問点。
    「一幕の最後で、なんで怪物殺そうとしたん?」
     死後直後の脳を使って強力な電流に耐えられるかの実験で、見事に耐えて成功したわけだから、もっと観察したらよかったんじゃ?ルンゲが殺されたからカッとなったのかもしれないけど、ルンゲに対して雑な感じで接してアンリと親交を深めていたように思うし失敗と判断するには早すぎでしょう。
     何より処刑前に「科学者としての血が騒ぐ」だったり、「科学の発展に必要な犠牲だ」なんて思っていたわけだし。まぁこれは友情との間で揺れ動いてぐじゃぐじゃな感情のまま実験に移るわけですが…。
     天才科学者(本人がどう思っているかはわかりませんが)で、研究をしていたのに、なんで急に科学者から普通の人になるの。アンリだってそこの倫理問題で悩んで研究を中断した経緯をビクターは知っていたけど、それでも推し進めたじゃない。その強い信念を見てアンリがビクター研究所に入ったと思うのにな。実験の対象として戦死者はよくて友人がダメな理由は?その線引きは?とかいろいろ考えてしまいます。
     あと、なんで生命創造の研究をやめてしまったん?
     裁判直前の貴重な時間を割いてアンリから直接思いを受け取って研究を託されたと思うんですが…なんで?
     最終的には理由はわからないけれど、アンリが記憶を思い出して研究は成功しているわけだから、このまま研究を続けていれば本当に夢見た新しい世界が見られたかもしれない。戦争が終わったからと言って、ビクターの言っていた腐敗した世界も終わるとは限らないのに、なんで止めてしまったの?たらればの、しょうもないことを言っていますが、どうして?という思いがあります。

     囲まれていた愛に気づかず、友を失い、ルンゲを失い、姉、さらには幼馴染であり妻のジュリアを失って初めて気づいた、不器用で弱く寂しがりな人間だったのかなと思います。周囲に狂っていると思われていましたが、実に人間らしい面を持っていますね。まるで人は愛がないと生きられない、ということを体現したような人生です。
     あと、Wキャストの中川さん、柿澤さんのビクター・ジャックが違いすぎて楽しかったです。(多く見れたわけではないのですが…。)さらっとだけ書かせてください。中川さんは、「ザ・お坊ちゃん」って感じの、冷静で怒ったら怖いんだろうなの雰囲気がある人という印象です。狂気を内に秘めている感じ。対して柿澤さんは、お屋敷を頻繁に抜け出してそうなお坊ちゃんで、直情型の一匹狼という印象です。お坊ちゃんらしくないお坊ちゃんというか。ジャックも対照的で楽しかったです。

  今回はこのあたりで終わりたいと思います。刺激的で悲劇的な作品だったと思いますが、楽しい観劇となりました。終演後に暗い気持ちのまま劇場を出て、冬の寒さでさらに気持ちが沈んだことも、きっと忘れることはないでしょう。発表されている今後の作品も楽しみです。それでは。